組織における「データ × 共有 = 資産」
まず自分の立場を明示する。
個人事業主として、ソフトウェア開発とそれにまつわる色々をお仕事として生計を立てている。カウントダウン生活というのをやっていて日本国内を転々としながら暮らしているので、就業場所について「業務は必ずオフィスにて行ってください」といった制約のない案件だけを受けている。だいたいの案件は自宅でこなしていて、たまに「みんなで集まりましょう」ってときには指定のオフィスに向かうという感じ。
こういった状況なので、自分としては「自分の業務上の言動は可能な限りデータ化されて、その現場の共有資産になってほしい」というベクトルをもって業務に当たっている。
- こういう情報を得て
- こういうことを感じて
- こう考えて
- こう取捨選択して
- こう意思決定して
- これが成果物です
このようなすべてをなるべくデータ化したいと考えているし、そうなるように努めているということ。ほんでまあ、ソフトウェア開発だとやりやすい。
自分の見立てだと、
- 成果物がデジタルデータである
- 成果物に至るまでの試行錯誤がデジタル上で行われる
- コミュニケーションの経路がデジタルである
こういった条件が揃っていると、現場にデータが蓄積されやすい。具体的には「やりとりはだいたいSlackのチャンネルで」「書いたコードはすべてGitHubに」なんかが満たされていると、お仕事をやればやるだけデータが自然にたまっていく。
業務遂行上のあれこれがデータになっていてそれが組織内で適切に共有されていると、LLMをコア技術としたAI Agentなどなどの恩恵を受けやすくなる。
2026年、いろんな企業さんの「もっとAIを活用したくて」「当社のことを知り尽くしたAIってつくれますか?」的な相談を受ける機会がちょいちょいあって、そのたびに「業務のどれくらいがデータ化されていますか?」とヒアリングさせてもらう。
業務がデータ化されている企業であれば、ぼくに相談するまでもなく2026年6月までになんらかの「会社専用チャットAI」的なものをすでに試していることが多くて、ぼくに相談がくるってのは、つまりデータ化が進んでいないってことだったりする。
じゃあ「今からデータ化を進めていきましょう」ってときに、どういうアプローチが有効なのかはよくわかっていない。もちろん「その企業に、その現場に合ったやり方で」ってことにはなるんだろうけれど、カタはいくつか知っておきたいよね。
情報共有って組織の文化と密接に関連するテーマだと思っていて、だから「ツールを導入すればオッケーです」みたいな単純な話じゃないんだよな〜。
Slackを導入したとて、現場のみなさんがパブリック・チャンネルで発言することに抵抗を感じる雰囲気があれば「DMでのやりとりでデータ化はされるが、企業の資産にはならない」みたいな、閉じたデータ化になっちゃったり。オフラインの口頭でのやりとりでずっとがんばってきた人たちは、口頭で話したあとでわざわざそれをSlackにも書き記すなんて二重ワークはやりたくないだろうし。
Google Workspaceが導入されていても「すべてを共有ドライブに置いています」と「マイドライブに置いたファイルを必要があれば共有しています」だと、だいぶ意味がちがう。
3年前であれば正攻法しか思いつかなくて「ひとつのチームからでもいいから、なんでも書き込んで放り込んでデータ化して資産化して、それによってなにかがよくなったという事例をつくりましょう」と進言していたかなあ。自分もチームの一員として参加させてもらえる現場であればね、ぼくひとりから率先して考えていることもぜんぶテキストに起こしながら仕事する、って姿を見せたり。
2026年ならどうなんだろう。会話を録音するとか、書いたものを写真に撮るとか、雑なデータでも今のソフトウェア・テクノロジがあれば使えるデータに加工はできちゃうから、既存のワークフローはあまり変えずに、外付けの工夫によってちょっとずつデータ化・資産化を進めて、なにかしらメリットを生じさせるところまで駒を進められるのかな〜。
でもやっぱり文化の話は無視できなくて、なんでもかんでもデータ化されて組織内の誰もがアクセスできる状態になることに忌避感を覚える人もいるよ。それはそう。自分の一挙手一投足がデータ化されるの、慣れていない人にとっては受け入れ難いところがあると思う。
自分なんかはずっとそういう環境でお仕事してきたし、なんだったら「業務上のことを現場に共有しないで持ち帰るのは横領みたいなもん」と思っているから、むしろ共有しないと気持ち悪い。自分みたいな感覚の人だけで組織を構成すれば勝手に資産が積み上がっていくから、LLM時代にはかなり有利に戦える組織になると思う。
そこで働く人たちのマインドセットを変えることも含めて、文化を変えていくぞ〜って気概がなければ、AI活用もなかなかむつかしいと思いますよ。ってことになるのかなあ。
「お仕事していれば勝手にデータ化・資産化する」って装置をつくれたらいいよな。企業相手にうまいことやっている人たちは、このへんの手札をいろいろ持っているんかな。